「みてね基金」第四期 イノベーション助成 選考結果
概要
詳細は 「みてね基金」第四期 イノベーション助成 公募要項 をご参照ください。
選考結果
総評
イノベーション助成は、非営利団体が積み重ねてきた実績やノウハウ、資産を活かしながらも、これまでの活動や成果を超え、社会システムの変革を生み出すビジョンとプランを持った団体を支援する助成プログラムです。
第二期イノベーション助成につづき、今回もたくさんの申請をいただきました。申請事業の中には、自団体の強みや特徴を活かした挑戦的な事業がいくつもあり、資金使途の柔軟性が高く、比較的大きな資金が非営利団体の挑戦の後押しになりうることを改めて実感しました。ご申請いただいた全団体のみなさまには、貴重な時間を割いていただき、改めて御礼申し上げます。
採択した4団体および申請事業のご紹介、4団体に対する「みてね基金」のコメントは、本記事下部に掲載しております。
「みてね基金」はシステムチェンジの「火付け役」として、革新的でチャレンジングな事業に取り組む非営利団体とともに、すべての子ども、その家族が幸せに暮らせる世界の実現を目指してまいります。
採択団体
特定非営利活動法人ウィーズ
認定NPO法人CLACK
特定非営利活動法人チャリティーサンタ
特定非営利活動法人Chance For All
※50音順
選考プロセスと団体数
第二期 イノベーション助成との比較
活動領域別申請数
申請団体の主な活動を、「みてね基金」の定める5つの領域「難病・障がい」「教育」「貧困」「出産・子育て」「虐待」で分類すると、「教育」、「貧困」の順に多い結果となりました。
活動実績
申請団体の要件として、団体の活動実績は「原則として3年以上」としています。採択団体のうち、最も短い活動実績は5年でした。
財政規模
申請団体の要件として、団体の財政規模は「原則として年間3,000万円以上」としています。財政規模が年間3,000万円を下回る採択団体もありましたが、申請金額も3,000万円を下回っており、申請事業に対する自団体の現状や体制を踏まえた申請内容だと考えられます。
特定非営利活動法人ウィーズ
活動テーマ:出産・子育て
団体サイト:https://we-ed-s.com/
申請事業:日本版パランパルミル:1,000人の親プロジェクト
助成額:28,456,600円
理事長 光本 歩のコメント
団体の活動内容
虐待、ネグレクト、親同士の喧嘩、さまざまな理由で、家庭が安住の場所ではないと感じる子どもたちがいます。家庭環境や親子関係というルーツが揺らぐことは、その後の人生を左右しかねない深刻な課題です。 私たちは家庭環境や親子関係にしんどさを抱える子どもたちと、しんどさを抱えて育ったかつての子どもたちである親や大人の伴走支援に取り組んでいます。生い立ちによって生じた過去の傷が回復し「大変なこともあったけれど、これでよかった」と捉え、それぞれが自分の人生を自分主体に歩んでいけるようになること、次世代に負の連鎖が残らないようにすることを見据え、ひとりひとりが価値ある自分を信じられる社会を目指します。
申請事業の内容
当団体が昨年おこなった「しんどさのある家庭環境や親子関係を生き抜いたかつての子どものアンケート」では、「子ども時代に家出をしたいと思ったことがあるか」という項目に家庭環境に悩みがあった方の89%、なかった方の57%が「はい」と答えました。実際に家出をした方は12%。親も子も知る人の下へ行くか、行き場のない若者が集う路上やSNSで出会った見ず知らずの人の下など危険な場所に行くかという選択でした。家出をしなかった方たちも希死念慮を高めたり、自己否定感を高めたりしています。 私たちは今回、フランスのパランパルミルという半里親制度を参考に、親以外の大人が関わりながら地域で子どもを育て、孤立を防ぐ仕組みをつくります。
「みてね基金」のコメント
今回の申請事業は、これまでのウィーズの特徴を活かした「子どもを支援する大人を増やす」新たな挑戦です。本事業が参考にしているフランスのパランパルミル(半里親制度)と同様の制度は日本にはまだ存在しておらず、3年の助成期間で調査と実証実験を行い、法整備を見据えたモデル事業化を目指します。公的な社会的養護の制度が存在する中で、民間が主体となった日本版パランパルミルの制度化はかなり難易度が高いですが、経営チームが温めていた10年来の構想を実現するという、強いコミットメントにも期待を寄せています。
認定NPO法人CLACK
活動テーマ:貧困
団体サイト:https://clack.ne.jp/
申請事業:困難を抱える中高生へのデジタルを活用した自走支援モデルの確立
助成額:100,000,000円
理事長 平井 大輝のコメント
団体の活動内容
ミッション: 困難を抱える中高生に、デジタルを使った伴走支援のインフラをつくる。
日本の子どものうち9人に1人が相対的貧困にあるという調査報告があり、家庭環境によって様々な知識、経験、学習機会等に格差が生まれており、貧困が連鎖する社会構造だけでなく、貧困による「経験」「つながり」「考え方」といった3つの不足が将来の自立をより困難にしています。CLACKではデジタルを活用し、様々な困難を抱える中高生がロールモデルとつながる場、学び方を身につける機会、学んだことを実践する機会を提供し、つながり・経験・考える力を獲得して、自立できる社会を実現するために活動しています。
申請事業の内容
困難を抱える中高生には、
①支援につながるためのきっかけがなく、支援が届かない
②衣食住を支える支援はあっても、将来自立するための支援が少なく、貧困の連鎖から抜け出せない
といった課題があります。 そのため本事業では、困難を抱える中高生が「気軽にデジタルに触れる+学べる居場所」を東京都に新設し、つながり・経験・考える力を育み、将来的な経済的・精神的自立を目指します。いずれは、「デジタルを活用した支援」のノウハウを全国・各地域に合わせた形で届け、貧困の連鎖の構造を変えていきます。
「みてね基金」のコメント
団体創業から5年という若い経営チームですが、企業や行政との取り組みの実績があります。中高生のデジタルへの興味関心の高さを活用し、困難を抱える中高生への学びの機会と就労の道筋、安心できる環境を提供する「デジタル居場所」という申請事業には、自団体が主体となった居場所づくりだけではなく、全国に「デジタル居場所」を広げるビジョンとプランが描かれています。これからデジタル技術がますます求められる社会となる中で、困難を抱える若者が自走可能な社会を実現することを期待しています。
特定非営利活動法人チャリティーサンタ
活動テーマ:貧困
申請事業:寄付体験を最適化し企業とNPOが連携する思い出格差の解消事業
助成額:86,880,000円
代表理事 清輔 夏輝のコメント
団体の活動内容
ミッション:子ども達に、愛された記憶を残すこと
ビジョン:子どものために大人が手を取り合う社会
チャリティーサンタでは、上記ミッション・ビジョンを叶えるために3つの軸で活動を行っています。
(1)全国の支部と共に行う「サンタ活動」
(2)広く一般の個人・法人からの寄付を募り、困難な状況にある子ども・保護者へ無償で取組を行う「支援活動」
(3)他NPOはもちろん、企業や自治体と手を取り合って仕組みをつくる「連携事業」
申請事業の内容
経済格差に伴う子どもの思い出格差(≒体験格差)は、「子どもの諦めや自尊心を損なうこと」に加え、「親が罪悪感を抱えることやその結果、社会的孤立を深めてしまう恐れ」もあることがわかってきました。 この課題に対し、自団体だけではなく、全国の他NPOと手を取り合い、さらに企業と連携することで新しい寄付モデルを構築していきます。 また「寄付者も受益者である」と捉え、寄付者の「楽しい・幸せ」寄付体験を最適化し、「新しい寄付のあり方」を普及します。 さらに、ネットワーク団体にノウハウ共有・移譲し、より寄付市場の高まりを醸成していきます。
「みてね基金」のコメント
子どもの思い出格差解消のために、NPOと企業が連携し、寄付者体験を重視した寄付文化が根付くことを目指す申請事業は、日本のこれまでの寄付文化を大きく変えていく可能性があると考えています。第二期 ステップアップ助成を経て、事業の基盤を強化し、すでに寄付体験の変化を起こしてきた実績がありますが、ただ広げることを目指した申請事業ではなく、寄付者体験を大事にしながら、スケールアップできる申請事業だと考えています。
特定非営利活動法人Chance For All
活動テーマ:教育
申請事業:災害時緊急こども支援チームJ-CSTの創設
助成額:70,000,000円
代表理事 中山 勇魚のコメント
団体の活動内容
わたしたちは、「生まれ育った家庭や環境に関わらず、だれもが幸せに生きていける社会の実現」を目指し活動しています。こどもたちは生まれる家庭や育つ環境を選ぶことはできません。その一方でこどもたちの人生はそれらの環境から強く影響を受けます。わたしたちはどんな環境にある子も幸せに生きていけるように、地域のみんなでこどもたちを見守ること、こどもたちが自分の意志で自由にアクセスできる居場所やあそび場を運営すること、あそびや居場所の大切さを研究したり社会に伝えたりするなどの活動を行っています。
申請事業の内容
災害時のこども支援は、個々の団体の活動に依存しています。災害ボランティアも減少傾向にあり、医療やインフラ支援に比べると団体同士の連携や自治体との連携も進んでいません。 また、増加するいじめや虐待、自死の統計結果から、こどもたちの自己肯定感の低さが懸念される一方、健やかに成長していくために必要とされる遊びや体験の機会は減少。それは、都市も地方も共通の課題であり、遊ぶ「空間、時間、仲間」の減少が原因としてあげられます。 そこで、機動的にあそび場を展開できるプレーカーを用いて、平時は全国であそび場支援を行い、災害時は迅速かつ専門的に被災地のこども支援を行うためのチーム「J-CST」を創設します。
「みてね基金」のコメント
子どもの居場所、遊び場や遊び方を提供している全国の団体をネットワーク化し、災害時でも子どもが子どもらしくいられる場所と機会をすばやく提供することを目指すという、これまでにない取り組みです。また、自団体の枠を超えた成果を目指すうえで、様々な団体から専門性の高い人材を招聘した運営チームを編成しており、自然災害が避けられないこの国の新たなセーフティーネットとして、重要かつインクルーシブな役割を担う可能性を感じています。