【分析レポート】NPOの資金使途から読み解く「みてね基金」、見えた資金以外の支援の必要性
「すべての子ども、その家族が幸せに暮らせる世界」を目指して2020年4月13日に開始した「みてね基金」は第一期の助成期間を先日終了しました。
第一期ではコロナ禍の緊急支援を目的とし、約1年の助成期間で約3億円の支援を実施しました。
助成期間中、53の団体との定期的な面談を実施し、報告書を提出していただきました。その報告書の中に「何にどれぐらいお金を使ったのか」が記載された支払明細書があります。
今回は、53団体の支払明細書を集計し、助成金がどのように使われているのかを分析してみました。
採択団体数と費用総額
費用総額は「みてね基金」の助成金を含んでいます。「みてね基金」の助成金を超えた約1.6億円は、団体の自己資金や他の助成金などから捻出されていました。
以降の金額は「みてね基金」の助成金が含まれた費用金額です。
費用額が最も大きい項目
人件費への使用が多く、費用総額の約40%を占めていました。一般的な助成金では、助成金額に対して人件費に使用できる比率が指定されていることもあるのですが、「みてね基金」では助成金の使用用途に制限を設けていませんでした。その結果、コロナ禍での緊急支援の必要性から、受益者(=各団体から支援を受ける人)への直接的な支援業務に携わる人材、物資支援の関連業務に携わる人材に人件費が使われていたようです。
なおクラウンとは「道化師」のことで、クラウンが入院や闘病生活をおくる子どもを訪問して、子どもと一緒にゲームやアクティビティを楽しんでいます。
・認定NPO法人日本クリニクラウン協会
・特定非営利活動法人日本ホスピタル・クラウン協会
特徴的な資金使途
物資関連費
やはり食品と日用品に多く利用され、配送費用も大きなインパクトになっていたようです。特に中間支援団体(=多くの団体をつなぐ役割を持つ団体)や規模が大きい団体は物資取り扱い量が大きくなるため、配送費用もさらに大きくなっていました。
オンライン化関連費
ほとんどの団体が受益者とのコミュニケーションにLINEやZoomを利用、有料プログラムの活用も見られました。
また、受益者へのWi-Fiデバイスの提供、団体内のWi-Fi環境の構築やIT関連機材の購入(PC/スマホ/タブレット、動画制作のための機材やオンライン配信のための機材)などにも使われていました。同時にインターネット通信費やキャリア通信費も積み上がっていました。
開発・制作費
HP制作、動画を含むコンテンツ制作など、オンライン化に伴う開発やデザインができる人材への委託費などに使用されていました。
車両関連費
前述のとおり、物資の取扱量が多くなる中間支援団体がトラックを購入していました。しかも、冷凍や保冷が可能な本格的な配送用トラックとは驚きでした。また海外で支援活動する団体でも移動手段として乗用車が購入されたり、車両維持費に活用されていました。
マーケティング費
ウェブ広告やプレスリリース配信などの費用に使われましたが、全体に対する割合は低めでした。
一方で、団体の支援活動の認知向上、支援が必要な人たちへの周知のためのマーケティングやPR活動は不可欠だと考えます。「みてね基金」では前述のとおり助成金の使用用途に制限を設けておらず、各団体からマーケティングや広報に関する相談も多かったのですが、コロナ禍のため、緊急性を伴う直接的支援やオンライン化に伴う費用への使用が優先されたようです。
オンライン化への取り組み
コロナ禍で奇しくも、これまで対面の支援や相談事業を中心としていた団体のオンラインコミュニケーションが後押しされ、コロナ前からオンライン化していた団体はさらに拡大する形となりました。
また、オンラインでの自宅学習が困難な環境にある家庭、子どもが入院している病院のIT機材の不足、通信費が払えず、スマホが使用できなくなることで孤立化する若者の存在がより明らかになり、通信費も含めた端末支援も行われました。
特徴的な物品への資金活用
コロナ禍で団体の支援活動が限定され、支援が必要な子どもや若者の行動も制限されました。そんな中でも各団体ができることを模索した様子が購入した物品から見受けられました。
miyasuku EyeConSW
特徴:文字盤や視線入力装置を使用し、利用者の身体機能に合わせて操作できる重度障害者用の意思伝達装置。
利用目的:目や指先を動かして意思表示をするお子さん自ら意思を伝える手段を身につける。
購入した団体:社会福祉法人むそう
胎児モデル / 胎盤モデル / 布製骨盤モデル
特徴:胎児モデルと胎盤モデルをつなぐ臍帯(さいたい)があり、胎児モデルは骨盤モデルを通り抜けることができる。
利用目的:性教育等の出産シーンで、胎児が骨盤をどのように通り抜けて誕生するかを説明する際に利用している。
購入した団体:特定非営利活動法人ピッコラーレ
支援した人数
53の団体が「みてね基金」の助成金約3.1億円を含む資金約4.7億円を活用し、コロナ禍で支援活動をおこなった結果、のべ約8万人※に支援が行われました。
※世帯単位で行っている一部の支援については、一世帯を2人として換算しています。
「みてね基金」からの提案
「みてね基金」助成第一期では資金提供による支援を行いました。約1年間の助成期間を終えて、使途制限の少ない助成金の役割を理解すると共に、今回の集計と分析から、サービスや製品、スキルなどの資金以外の支援の提供も必要だ、と感じました。
上記の支援案をきっかけに、「自社のサービスや製品を提供すれば支援になる」、「自分のスキルや経験を活かしてボランティアができる」と考え、行動する企業や個人が増えれば、大変うれしいです。
「みてね基金」は『すべての子ども、その家族が幸せに暮らせる世界を目指して』、これからも支援活動を続けていきます。