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【活動レポート】伴走支援とは? 「みてね基金」が大切にする非資金的支援の裏側

こんにちは、みてね基金事務局です。

「みてね基金」は、2022年4月13日で2周年を迎えました。
「すべての子ども、その家族が幸せに暮らせる世界を目指して」というミッションのもと、子どもとその家族の課題を解決するNPO・NGOの91もの事業をご支援できることを、とても光栄に思っています。

「みてね基金」の2年間の歩みについては別記事でレポートしているので、今回は視点を変えて、「みてね基金」で大切にしている伴走支援に着目してみました。


伴走支援とは?

「みてね基金」では、資金提供のほかに、伴走支援などの非資金的支援もおこなっています。伴走支援とは、団体が抱える課題に対して、団体に寄り添いながら解決への糸口を探すお手伝いをする支援のことです。

現在助成中の「みてね基金」第二期では、支援団体それぞれに勝手ながら担当をつけさせていただき、ニーズに応じて、定期的な面談をはじめとした伴走支援をおこなっています。担当には、ITやコミュニケーション分野での事業開発や、ベンチャーからメガベンチャーに成長した経験と視点を持つ株式会社ミクシィと、社会課題の解決に向けて活動するNPO・ソーシャルビジネスや、社会的インパクトの拡大の支援に強みを持つNPO法人ETIC.から、それぞれ一人以上を選定。定期的な面談の機会を設け、進捗や課題の整理のほか、それぞれの得意領域を生かした情報・ノウハウの提供、専門領域や難しい課題については有識者の紹介を行うなど、団体に合わせた支援を行っています。

「みてね基金」では、この伴走支援をとても大切にしています。そこで今回は、「みてね基金」ではどのような伴走をしているのか、そして効果はあるのか。伴走支援をしていて印象的だった6団体をピックアップして、伴走担当者、メンター、団体代表者に率直なご意見を伺いました。

認定特定非営利活動法人はっぴぃmama応援団

産前産後のママへの「切れ目のない支援」を目指し、訪問ケアやデイケア、育児相談会などを行っている団体です。「みてね基金」では、長期的に支援活動を進めていく上で、事業基盤や組織基盤の構築を支援しています。地域に根ざした活動や、訪問看護領域で実績のある河野良雄さんにメンターとして参加していただき、助成事業の検討を進めています。

伴走担当者:渡辺はるかさん(NPO法人ETIC.)
伴走支援の面談では、助成事業について話し合う前に、まず団体そのものの在り方やミッションについて代表の松山由美子さんと事務局の佐藤亜紀さんが向き合い、スタッフとも丁寧に話し合いを重ねるところからスタート。何度も面談を重ね、「みてね基金」で取り組む助成事業の位置づけと、団体として助成事業に取り組む理由を確認しました。結果として、地域で支援を継続するため、活動の自立化を目指し、訪問看護ステーションを立ち上げることを決断されました。現在はメンターの河野良雄さんより現場感のある助言をいただきながら準備を進めています。試行錯誤から決断、そして次のステージへ進む過程に継続的に関わることができることは、私たちにとっても学びが多いです。これからも、迷ったときにははっぴぃmamaさんのビジョンに一緒に立ち戻りながら、挑戦を応援していきたいと思います。

メンター:河野良雄さん(特定⾮営利活動法⼈ADDS・監事)
伴走支援開始時は、新規事業立ち上げ計画も分からないことだらけの様子で、メンバーの皆さんからも戸惑いの表情が見られましたが、面談を重ね制度や業務について具体的な洗い出しを進めるうちに徐々にイメージもクリアになってきているようです。常に団体のミッションに立ち返りメンバー間でとことん話し合って、納得感・一体感を持って進んでいる姿が打ち合わせのチャート資料からも伝わってきます。今後の更なる推進を期待しています。

団体代表者:松山由美子さん(認定特定非営利活動法人はっぴぃmama応援団・代表理事)
当法人が「みてね基金」に応募した理由は、「基盤強化」に力を入れたかったからです。助成金生活を10年以上続けてきた私たちは、いつも資金面に不安を抱えていました。「みてね基金」は、資金面だけでなく、事業運営や組織の考え方など、さまざまな角度からアドバイスをしてくださいます。的確に優しく応えていただく月次会議では、私たちの絡まっていた思考が整理され「話してよかった」と、皆の思いも一つとなり着実に前へ進むことができています。また、取り組み内容の修正にも柔軟に対応して下さり、私たちの思いや本当にやるべき事は何なのか? を大切にしてくださることに感謝の気持ちでいっぱいです。2年目は、新事業が始まります。私たちのモットー「ママの笑顔がいちばん!」を、さらに発展させたいと思います。

はっぴぃmama応援団さん、メンター河野さん、
みてね基金事務局とのZoomでの定例伴走ミーティング

一般社団法人sol

熊本県阿蘇郡高森町で、障がい児通所事業「アトリエモモ」、「森のようちえん」事業などを展開している団体です。インクルーシブ教育を柱として、文化・自然・地域を大切にしながら、地域に根づいた事業をおこなっています。「みてね基金」では、心のケアが必要な子どもの不登校支援事業および人材育成のための研修への資金的支援に加え、組織力向上に向けた伴走支援も行っています。同じく熊本県阿蘇郡で地域支援事業を展開されている安部浩二さんにメンターとしてご支援頂いています。

伴走担当者:渡辺はるかさん(NPO法人ETIC.)
伴走担当の私とメンターの安部浩二さんとで阿蘇にある現地に実際に赴き、solさんの活動現場を拝見してきました。訪問中も、子どもたちやご家族、さらには卒業した子どもたちまでもがsolさんの活動に参加しており、代表の中山千春さんやスタッフの皆さんとの温かいやりとりを見ることができました。子どもたちや保護者の方々、そして地域の多世代の方々に対して、現在の支援にとどまらず、次なる活動のアイディア・想いも抱える中山さん。持続可能な組織づくり・理想の活動の実現に向けて、一つ一つのステップを確認しながら進めています。起業家として理想に向かって困難を乗り越えながら、また、仲間を増やして地域で活動を続けていく経営者としての中山さん、そしてsolの皆さんの挑戦をこれからも応援していきます。

メンター:安部浩二さん(株式会社SMO南小国・COO)
高森町を活動拠点としている理由をお聞きした時に「障がいのある子どもたちのためのサービスがない町だったからこそ、この町でやることを選んだ」と悲壮感や気負いなく仰っていたのには、いわゆる「条件不利地域」内での地域課題への取組みとビジネスモデルの両立を模索する同じ立場として、その起業家精神と当事者意識に感銘を受けました。伴走支援期間中の取組みからも、一事業者の枠に留まらず、目指すビジョンの実現に向けてさまざまなステークホルダーを巻き込む動きになっていくのではないかと期待しております。

団体代表者:中山千春さん(一般社団法人sol・代表理事)
「取り組みたい社会課題解決がどんなものであろうと、自分一人の力ではやれることに限りがあり、仲間がいるとできる可能性が広がっていく」ことの場として始めた一般社団法人solの活動。引いてはこの小さな場所がたくさん増えることで世界が平和になれば……との願いもありました。しかし、法人3年目に入り、やりたいこととやれること・できることとできないこと・想いだけでは突き進めない壁も出てきた年始め。運よく福祉と行政の谷間で中間山地では取り組みづらい不登校支援や保護者支援・組織強化として「みてね基金」から支援をいただくことになりました。どんな活動も参与する仲間たちと学び合い・語り合い・同じ方向を目指し自分たちの位置を確認し合い、そしてまた明日の一歩を歩むこと。「みてね基金」では、法人として人として代表として悩みや喜び・挑戦も全て受け止め、事業支援だけでなく、精神的に時に背中を押し支えていただいたこの一年。人を支援するためには自分たちも支援していただきながら、新たな気づきや互助が生まれると改めて感じる一年でした。健やかな場があり、関わる人々も健やかになっていく。来年度はこの阿蘇地域だからこそ発信できる場を周囲へも提供していきたいです。

solさん、メンター安部さん、みてね基金事務局との
Zoomでの定例伴走ミーティング

特定非営利活動法人ウィーズ

親の離婚をはじめ、家庭環境に悩む子どもを支援するウィーズさん。「みてね基金」では、組織基盤強化をご支援しています。NPO組織の運営に実績のある認定NPO法人かものはしプロジェクトの本木恵介さんをメンターとしてお迎えし、定期的にディスカッションの機会を設けました。

伴走担当者:関麻里さん(株式会社ミクシィ)
現在日本では、4人に一人の子どもが親の離婚を体験するそうです。みてね基金事務局では、ウィーズさんが運営する子どものための居場所「みちくさハウス」に訪問し、親の離婚等で悩む子どもたちをどう支援するか、そのためにどう組織を成長させていくかを真剣に議論しました。また、当事者の立場を少しでも理解するため、子どもの親との面会交流支援の現場に同席させていただいた経験は、活動の重要さを肌で感じる貴重な経験でした。今後もさまざまな現場に訪問させていただくことにより、「みてね基金」の活動がより当事者の声を理解したものになるよう努めていきたいと思います。

メンター:本木恵介さん(認定NPO法人かものはしプロジェクト)
ウィーズさんの活動は、いまの時代にとても大事な活動だなと感じながら応援させてもらっています。信念を大切にしながら、事業をどう拡大していけるのか、そのときにサステイナブルな組織や財務モデルとはなにかということについて継続的に議論させてもらってきました。数ヶ月おきにミーティングをしていますが、その度に前回のフィードバックを消化するだけではなく、さらに次の一歩にすでに進んでいく力に驚いています。

団体代表者:光本歩さん(特定非営利活動法人ウィーズ・理事長)
団体運営をしていて最もしんどさを感じるのは『一歩外にいる人の無理解』でした。当事者や1対1で話ができる関係性の人たちには活動の意義を理解してもらえても、それ以外の人からは「家庭の問題に第三者が入るのはリスクが高い(=支援はできない)」と言われる……そういうことが、活動へのモチベーション低下につながってしまうことは少なくありませんでした。客観的な立場で「子どもたちの置かれている現状」と「なぜ活動が必要なのか」を理解し共に真剣に考えてくださること、「一旦やってみる」も「一旦立ち止まる」も否定せず寄り添ってくださることが本当に心強いです。伴走支援は団体の活気を生んでくれているように思います。

ウィーズさん運営の居場所「みちくさハウス」に
メンター本木さんとみてね基金事務局で訪問

認定特定非営利活動法人ReBit

学生団体として立ち上がったReBitは、国内で約10%ともいわれるLGBTQの子どもや若者が抱える特有の課題解決に取り組まれています。「みてね基金」では、保護者や教員への研修事業への資金的支援に加え、将来の飛躍に向けた事業や組織の拡大に必要な組織基盤強化を支援しています。

伴走担当者:岨中健太さん(株式会社ミクシィ)
助成決定前の選考面談でお会いした時から「役割分担がわかりやすく、バランスの取れたチーム」という印象を持ったのですが、伴走支援が始まってから、ReBitの実行力や発信力に触れ、そのチーム力の強さを実感できました。伴走支援では、LGBTQへの世の中の理解と後押しが徐々に進む中で拡大する事業を支えるチームメンバーの「今とこれからの想い」に目を向けています。残りの伴走支援期間、ReBitの将来を見据えて組織課題について真剣に話し合うボードメンバーとチームメンバーの力になれればと思います。

メンター:番野智行さん(NPO法人ETIC.)
LGBTQなど、マイノリティの就労移行を支援する「ダイバーシティキャリアセンター」や、先生のためのオンライン情報センター「Ally Teacher’s School」など、LGBTQの子どもや若者にとって大切な事業を次々と仕掛けるReBitさん。一方で、事業の急拡大局面で必ず起きる組織の成長痛が課題となっていました。ミクシィやETIC.そして多くの先輩経営者たちがどう組織と向き合ってきたのかをお伝えしながらも、次のステージに向けて一緒に考える時間を持ち続けています。

団体代表者:藥師実芳さん(認定特定非営利活動法人ReBit・代表理事)
LGBTQは約10%。73%のLGBTQユースが、性のあり方に由来し家族等との生活に困難を抱え、68%が学校でいじめを経験。トランスジェンダーの58%は自死念慮を抱きます。
本プロジェクトでは、いじめや自死のハイリスク層であるLGBTQの子どもの理解者である保護者・教員を増やし、家庭・学校を安心な場にするため、e-learning研修をのべ1万人以上にご提供し、LGBTQ講師を全国で育成し学校で授業実施に尽力しました。
また、全国の子どものテーマに取り組む団体と横連携ができたこと、組織経営の伴走をいただき、LGBTQもありのままで大人になれる社会に向け邁進することができています。

ReBitさんとみてね基金事務局との
Zoomでの定例伴走ミーティング

認定NPO法人こまちぷらす

「子育てが『まちの力』で豊かになる社会」の実現を目指して、横浜市戸塚区をベースに活動しているこまちぷらすさん。「孤育てをなくし、それぞれの人の力が活きる機会をつくる」というミッションの実現のため、団体のさらなる成長に向けた組織基盤の強化をご支援しています。子育て世代の当事者の声に触れるきっかけを作る「3枚の葉っぱワークショップ」のデモンストレーションには、伴走担当者だけでなく、大勢のみてね基金事務局メンバーが参加しフィードバックを行うなど、事務局メンバーが全力でサポートしました。

メンター:番野智行さん(NPO法人ETIC.)
横浜市戸塚区で長く活動を続け、たくさんの地域の仲間と一緒に、子育て中の親御さんを対象に丁寧であたたかい居場所をつくられているこまちぷらすさん。全国から「こうした居場所を創りたい」「やり方を学びたい」という声が寄せられる中、次のステージに進むための資金として「みてね基金」をご活用頂いています。その動きを推進する大いなる課題はマネタイズと、仲間の応援をもっと集めること。地道に積み重ねてこられた信頼や関係資本を活かして、次の展開に進むことを引き続きご支援したいと思います。

団体代表者:森祐美子さん(認定NPO法人こまちぷらす・理事長)
今年度は、居場所の展開やウェルカムベビープロジェクトの他地域展開、そしてそうした事業展開をしていくための組織基盤強化を進めることができたのですが、同時に伴走いただいたのが、企業や自治体等に対して実施している提案型の事業の進め方です。地域の中で居場所を通して私たちが拾っている「埋もれた声」に、多くの方に耳を傾けていただき、困りごとの解決に向けて一緒に取り組んでいきたいと活動してきたのですが、なかなか安定した事業になりませんでした。事業化していくために整理をどうやってしていくのか、進めるためのステップはどのように考えたらよいのか、というような、「整理軸」を教えてもらったことは今年度のみならず大きな財産になりました。何より「価値があることをしている」ということを第三者的に力強く言っていただいたことが自信になりました。

こまちぷらすさんとみてね基金事務局との
Zoomでの定例伴走ミーティング

公益社団法人東京子ども子育て応援団

子どもの“食の貧困”に対し、一人でも多くの子どもにバランスの取れた食事を届けるため、忙しい子育て世帯が調理しやすくあらかじめ半調理した生鮮食品を配布する仕組みを作っている団体です。大手コンサルティングファーム出身元コンサルタントと元裁判官が、現役時代に社会から受けた恩恵を社会に返しをしたいと一念発起し、現役時代に培ったノウハウを十二分に活かしながら取り組んでいます。進める中で課題となったのが、団体の存在目的と中長期方針の設定です。子ども支援の動きが広がる中、何に取り組むことが課題解決につながるのか。団体としての次のステージのあるべき姿を描くため、NPO・NGOや企業に対するコンサルティング経験が豊富で、食というテーマについても知見をお持ちの川北秀人さんをメンターとしてディスカッションを行いました。

伴走担当者:関麻里さん(株式会社ミクシィ)
河野さんと川北さん、ビジネス界とソーシャル界それぞれで本当に力のあるお二人の対話となった伴走支援の場では、多くのことを学ばせていただきました。そのような場に同席できることに感謝の想いを抱きつつ、社会をより良くするために、自分に何ができるのだろうと自身に問う時間にもなりました。普段の伴走支援の場では、ミクシィ社員としてだけではなく、一人の働くお母さんとして、仕事が終わって疲れて帰宅した後の子どもの食事の準備は、洗い物が少なく、栄養バランスが取れるメニューにしたいです、といった“ユーザー”視点でのご意見もさせていただいたりしました。

メンター:川北秀人さん(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所])
新型感染症という世界規模の災害は、それ以前から課題や困窮を抱えていた人々の状況をさらに深刻化するとともに、そのことを見えにくくしてしまいました。それゆえ、その人々の支援活動と、また、人々が置かれる状況の把握と共有の重要性は、かつてないほどに高まっています。同会のお取り組みは、そのニーズに適切かつ着実に応えるものであり、多くの団体・企業・行政に共有されることを期待しています。

団体代表者:河野司さん(東京子ども子育て応援団・事務局長)
子育て家庭にとって、野菜を取り揃えたご飯作りが、手の届き難い贅沢品になっています。そんな中で、助成頂いた冷蔵車両・冷凍機器・真空包装機が、小分け冷凍パック野菜の提供を実現し、頑張るお母さん達の福音となっています。今後は、ミールキット化と調理法提供も進め、各家庭に求められる食支援の在り方を深めて参ります。
画餅に終わりかねなかった新しい食支援開発にあたり、十分な投資資金をタイムリーに助成頂くだけでなく、継続可能な事業化に向けた非資金的伴走支援を賜り、本当に有難うございます。ワクワクする事を自分もチームも楽しくやれれば、世の中の為になる事は必ず事業化できると励まして頂き、日々活動させて頂いております。


Zoomで東京子ども子育て応援団さんが
プロジェクトスケジュール案のご説明中

以上、6団体をピックアップしてお届けしました。団体のみなさまの熱い想い、そして行動力は、私たちの原動力にもなっています。そして何より、伴走支援がお役に立てているようでホッとしました。

「みてね基金」では今後も、団体のみなさまとのつながりを大切にしながら、引き続きご支援して参ります。


すべての子ども、その家族が幸せに暮らせる世界を目指して。

「みてね基金」では、このミッションの実現に向けて、一緒に歩んでくださる団体さまとのつながりを大切にしながら、引き続き支援して参ります。

また、第三期助成プログラムも検討中です。詳細は本サイトTwitterでお伝えいたしますので、ぜひフォローをお願いいたします。