「みてね基金」第三期 ステップアップ助成 選考結果
「みてね基金」は、「すべての子ども、その家族が幸せに暮らせる世界を目指して」という目標を掲げ、子どもやその家族を取り巻く社会課題の解決に取り組む非営利団体への助成活動を行っています。
第三期では、第二期に続き「ステップアップ助成」を実施します。第二期では、経営リソース(人、事業、資金)が整っている団体や、その重要性に気づき整えようとした団体が飛躍的な成長を遂げており、非営利団体の成長における経営リソースの大切さを改めて実感しました。第三期「ステップアップ助成」では、経営リソースによりフォーカスし、第二期採択団体への支援活動から得た知見を活かした助成プログラムで、非営利団体の事業・組織基盤の強化を支援します。
「みてね基金」第三期 ステップアップ助成 概要
総評
「みてね基金」は、子どもとその家族を取り巻く社会課題を5つの領域に分類しながらも、支援領域を限定せず、多様な活動を支援していくことを大切にしています。その中でも「ステップアップ助成」は、将来の成長や発展に向けて、事業の変革や組織基盤の強化など、緊急度は低くとも重要度の高い取り組みのための柔軟な資金の提供が目的です。今回も多数のご応募をいただき、こうした資金への強いニーズを感じています。
「ステップアップ」の意味合いは申請により様々ですが、事業ステージにより大きく3つに分類できると考えています。
創業期の試行錯誤を経て、確かな事業仮説に到達し、成長の加速を目指す
成長過程にある団体が、事業や組織基盤に投資することでより大きなインパクトを目指す
成長に伴い発生した「成長痛」に向き合うことで、第二創業期に向けた準備を進める
今回の公募から、自団体の現状や課題について、詳細な分析を応募用紙に記載していただく形にしました。採択団体に共通していたのは、申請内容に2年間取り組むことで、その後の成長を期待できることが、書類と面接の両方から確認できた点でした。
一方で、不採択となった団体の皆様の申請内容も、その大半がしっかりと時間を取って検討いただいたことが伝わってくる内容でした。複数の団体から「申請プロセスを通して組織課題に向き合い、課題と対応策、将来像の解像度が高まった」という声もいただきました。ステップアップのための資金的支援に対する高いニーズを改めて実感し、今後の「みてね基金」の活動に反映してまいります。
改めて、今回時間を割いてご申請いただいたことに感謝申し上げます。
助成団体一覧
選考について
「みてね基金」第三期には、全国124の非営利団体からご応募いただきました。団体の現状分析シートをはじめ、応募書類の分量が多くなったにも関わらず、第二期ステップアップ助成に近い数の応募数となり、ご申請いただいた皆さまに改めて感謝申し上げます。
選考プロセスと団体数
一次選考では、審査基準に基づき書類選考を行いました。申請団体数は124団体、うち21団体が一次選考を通過し、最終選考に進みました。最終選考では全団体と面接し、採用団体を決定しました。
活動領域別応募数(5領域)
申請団体の主な活動を、「みてね基金」の定める5つの領域「難病・障がい」「教育」「貧困」「出産・子育て」「虐待」で分類すると、教育、貧困の順に多い結果となりました。
都道府県応募数(団体登録所在地)
申請団体の登録所在地を見ると、東京、大阪、神奈川、福岡の順に多い結果となりました。
助成団体及び事業内容
特例認定NPO法人ASHA
【代表者:任 喜史、サッキャ・サンディープ コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
ASHAは、Basic Health Rights for all(どこに生まれても安心して健康に暮らす権利を、みんなに)をパーパスとして掲げ、主にネパールで活動しています。1度きりの医療ではなく、「現地で続けられる医療を頼れる仕組みづくり」(“Affordable and Sustainable Healthcare Access”=ASHA)に注力しています。現在は、①医療機関へのアクセスが悪い地域における「保健委員」の設置、②中学校における健康教育、③紙カルテを患者が持ち帰るために医療機関に情報がなく、医療の質や現状把握に課題があるため、医療情報管理ソフトウェアの導入支援を行っています。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
今回の事業では、①「保健委員」の設置とデジタルによる支援、②健康教育の2事業について、ネパールのより広い地域に広げるための高度化に取り組みます。①は医療機関に簡単に行けずに不安を抱えるお母さんや子どもに対する家庭訪問により、必要な情報の提供やアドバイスを行います。訪問するスタッフは地域住民ですが、専用アプリの使用により、適切な情報を提供できるようにします。②は、応急処置や頻繁に発生するが適切なケアで重症化を防げる病気を中心に、中学生向けに座学と実技の研修を行います。これまでの取り組みを体系化し、現地だけで事業運営できる仕組みづくり、人材教育、効果測定に取り組み、どの自治体でも簡単に導入できる状態を目指します。
【「みてね基金」からのコメント】
活動開始以来の現地での事業仮説の磨き込み、サービス対象者の的確な設定、ITをうまく用いた事業モデル、説得力のある展開計画と、申請内容は多くの要素を高いレベルで兼ね備えたものでした。また、これまでのボランティア中心の活動から、組織体制を強化してスケール拡大を目指すタイミングは、ステップアップ助成の趣旨とうまく合致していると考えています。この助成を機に、ネパールの子どもとその家族に大きなインパクトを与える団体に成長することを期待しています。
特定非営利活動法人e-Education
【代表者:三輪開人コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
「最高の教育を世界の果てまで」というミッションのもと、途上国の子どもたちを始めとする学習機会や学習環境に恵まれない人々に対して、主にICTを活用した学習支援事業を行っています。活動国の一つであるバングラデシュでは、貧しい農村部から500人を超える生徒が現地の難関国立大学へ進学し、彼らが大学進学後に地元の子どもたちを指導する循環教育モデルを作り、誇りと想いやりを持って生きる若者育成に取り組んでいます。現在は、「共に学び、共に社会を創る」という理念のもと、国境を超える/跨る教育課題解決にも注力しております。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
日本で暮らす、日本語や算数の指導が必要な無支援状況下の外国人児童約1万人の点在・孤立を解決するモデルを作るために、自治体パートナーとオンライン教育支援モデルを作り上げ、2030年までに以下2つのゼロを目指します。
1. 日本語・算数指導が必要なのに何の指導も受けていない小中高生(現在約1万人)をゼロに
2. 来日直後の小中高生に集中的な日本語・算数支援を行っていない自治体(現在約94%)をゼロに
また、e-Educationの第三次中期計画(2024~2027年)の中核となる「4つのビジョン」の更新と同時に、新設する人自部とBX部(BX:Brand Experience)が機能する新体制を作ることを目指します。
【「みてね基金」からのコメント】
これまで主に国外で活動をされてきたところから、その知見を活かした、日本にいる外国籍の子を対象とする事業づくりと実践についてご申請いただきました。これまでの国外での活動のように、質と独自性の高い事業を日本で展開していただきたいと期待しています。また活動が変容する中での、ビジョン策定と新体制の構築についても同時にご申請いただいています。新たな領域を構築しながら足元を固めるという、両輪を回して大きなステップアップにして欲しいという想いでご支援を決めました。
特定非営利活動法人おてらおやつクラブ
【代表者:松島靖朗コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
認定NPO法人おてらおやつクラブは、子どもの貧困問題の解消を目指す活動団体です。日本全国にある寺院を社会資本と見立て、1,854の寺院と674の子どもを支援する団体(2023年3月時点)をネットワーク化し、「お寺にあるモノやコト」と「社会に足りないモノやコト」をつなげます。コロナ禍の長期化に物価高が重なり社会情勢が不安定になる中、特にひとり親家庭を取り巻く環境は、経済的にも精神的にも厳しさを増しています。「ともに生きる」仏教の精神にもとづいた活動を通じて、地域の人々が社会課題に目を向け手を取り合うことで、「たよってうれしい、たよられてうれしい。」と思えるような共助社会の実現を目指しています。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
今回の事業では、次の3つの課題に取り組みます。
1つ目に、職員一人ひとりの職務遂行能力の向上です。これまで理事が実務担当と管理職を兼ねていた状況を脱し、専任の有給職員が運営の中心的役割を担えるよう、研修や面談機会を充実させます。
2つ目に、IT導入によるバックオフィス業務の効率化です。属人化した業務のあり方を見直し、団体内手続の簡略化を目指します。
3つ目に、財務戦略の転換です。助成金・補助金の割合低下を目標に、賛助会員や継続寄付者を募り、お支えいただけるようファンドレイジングを強化します。これらの取組みを通じて、社会的インパクトを追求する組織となり、子どもの貧困問題の早期解消を目指します。
【「みてね基金」からのコメント】
「みてね基金」第二期ステップアップ助成から連続採択になりました。第二期では、コロナ禍で急増する食料支援の声に応えるべく、全国にある連携寺院の「おそなえもの」を「おすそわけ」できる匿名配送システムを構築されました。一方で、支援活動の広がりとスピードアップに適した人材育成や運営体制など、自団体の将来を見据えた組織体制強化の必要性を団体内で議論された結果として、組織基盤強化を中心とした事業を助成する第三期にもご申請いただきました。自団体の強みを理解した上で、課題を明確に捉え、打ち手を言語化し、ステークホルダーと対話できる力がすでにあるのですが、第三期終了時には更なる組織のトランジションを期待し、ご支援させていただくことになりました。
特定非営利活動法人Cafe de 寺子屋
【代表者:田中直輝コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
活動を通して「みんなのことにみんなが協力する社会」の実現を目指しています。目指している社会では、一人ひとりが主体的で他者を思いやることによって「自律・協調」を実現し、「飢餓」や「貧困」といった「社会課題」と呼ばれている現象全般が少しずつ小さくなっていくことが想定されます。そのために、私たちは地域に根づいた学びの場である「寺子屋」を全国につくり、子どもたちに主体的・対話的で深い学びの体験を提供します。寺子屋はカフェを営業時間外にお借りして開催し、地域の小学生から高校生・大学生までが集まり、一緒に自学自習に取り組みます。団体の運営は大学生のボランティアスタッフが中心に行い、2名の社会人のボランティアスタッフがそのサポートをしています。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
事業終了後に、以下の状態となることを目指します。
1.ボランティア募集の方法を一通り試し、ノウハウが文章化されている
2.対面・オンライン・オンデマンド形式で、有効な研修を実施できる
3.組織運営に携わるボランティアスタッフの割合が増える
事業では、以下に取り組みます。
1.常に新たなボランティアを募集
2.短い研修期間で活動を開始できる体制の整備
3.活動しやすい環境の整備
【「みてね基金」からのコメント】
ボランティアの大学生と学ぶ場を提供するカフェなどの社会リソースで、子どもが自ら学ぶことを支える活動に取り組まれています。全国に「寺子屋」をつくるという大きな目標と「みんなのことにみんなが協力する社会」の実現を目指されており、社会課題解決に参加するハードルを下げる価値を持つ取り組みでもあると感じています。本助成では、事業も組織も強みを明確にして、財務的な持続可能性と事業の拡大可能性を保ちながら、分散型の組織と事業の課題であるボランティアの質の維持・人員の拡大を目指す、組織と事業を支えられる運営体制の見直しに取り組まれます。
NPO法人Silent Voice
【代表者:尾中友哉コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
「聴者とデフが共にできることを増やす」(※デフ:聞こえない聞こえにくい人)
健常者が障害者を助けるという思い込みを壊し、共に助け合うことのできる社会へ。1,000人に1人といわれる聴覚障害のある子どもたちの教育環境の充実を図り、子どもの自己決定による進学・キャリアの実現をサポートします。
また最新テクノロジーを駆使した聴者とデフの連携や新しい障害認識を広げることで、社会の中で聴者とデフの共存価値を高めていきます。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
内発的動機をもつために必要な三つの力(自律性、関係性、自己効力感)を育む教育プログラムを開発します。加えて、ろう・難聴児に特化したアセスメント指標・方法の設定し、再現性のあるプログラム作成を目指します。
さらに、国内に事例がない「コ・エンロールメント」型教育(ろう・難聴児が場の3割以上を占め、聴児と対等な関係性築く新しいインクルーシブ教育モデル)に関する海外事例の現地調査を行います。「能力育成」や「共生的な文化の醸成」の観点からどの類型が日本の現状にフィットするかの分析を行い、短期プログラムの開発・実施に繋げます。
これらの事業づくりと並行して、管理体制や寄付基盤の構築を行い、事業を支える組織基盤の強化も進めます。
【「みてね基金」からのコメント】
これまでにはないプログラムを構築・実践すること、またそれを可能にしていくための組織基盤の強化のための事業をご申請いただきました。"聴覚障害者"も健常者も共に助け合う社会の実現に向けて、挑戦の2年間にしていただきたいという想いでご支援を決めました。試行錯誤からの学びを真摯に振り返り、柔軟に課題に向き合い事業を構築してきたからこそ、ここでももう一段も二段もステップアップして欲しいという期待を寄せています。
特定非営利活動法人SALASUSU
【代表者:青木健太コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
すべての人が自分らしい人生を歩める社会ー Encourage everyone to enjoy life journey をビジョンに、経済的・社会的に脆弱な人々が必要なライフスキルを身につけ、自分の意思で未来を切り開くことの実現を目指し、カンボジアの教育に大きな変化を起こす。
カンボジアの農村で14年間最貧困層出身の女性達へ教育と雇用を提供する中で向き合ってきたのは、チャンスがあっても「私なんて」と諦める姿でした。彼女たちが適切な教育で大きく成長し、自分らしい人生を歩む姿を見てきており、公教育の教師の支援を通して「貧困にあえぎ、自分らしく生きることができない人が多い」課題を解決していきます。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
スタッフの学びや努力が結集され、カンボジアの公教育セクターに影響力があり、健全な財務を保てる決断力ある団体を目指し、1)財務健全化、2)経営企画力強化、3)事業基盤強化に取り組みます。
1については寄付営業強化、プロポーザル能力強化、認定NPO法人取得、2についてはものづくりの縮小・撤退、経営企画強化、ディレクターの育成、その他組織強化、3については外部システム分析、SALASUSUソリューション評価と分析、影響力強化ためのイベント実施を計画しています。
着実に実行すべく、NPOや教育業界において第一線で活躍されている、SALASUSU愛のある豪華メンター陣に伴走していただきます。
【「みてね基金」からのコメント】
「みてね基金」第二期ステップアップ助成から連続採択になりました。自団体の創業事業でもあり、主力事業でもあるカンボジアでのものづくりを通した教育事業の撤退を決断し、財務体質の改善と経営判断力の強化を軸にご申請いただきました。カンボジアでの公教育改善の実績やノウハウを中心に自団体のこれからの在り方を問い直し、撤退事業の責任者を含めてリソースの再配置を決断。ピボットされたプロセスは困難だったかと思いますが、前向きに決断したことによって進むべき道と達成したい未来をクリアに見せていただけました。事業縮小と経営基盤作り直しという非常にハードルが高いステップアップですが、大きな期待感を持って採択いたしました。
認定NPO法人D×P
【代表者:今井紀明コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
D×Pは「ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会」をつくるために活動しています。不登校・中退・家庭内不和・経済困窮・いじめ・虐待・無業などを背景に、10代がいくつかの所属先や安心できる場を失ったことにより孤立していきます。孤立した時に相談先が限られていたり、未成年であるためにアクセスできるサービスや補助制度に限りがあり、本人のとれる選択肢が限られます。私たちは学校の中とオンライン相談で全国のさまざまな境遇で孤立している若者と出会い、つながりをつくり社会とつなげていきます。ひとりひとりの若者がどんな境遇にあったとしても、つながりが得られる状態をつくります。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
経済的困難、虐待を受けている、障害を持っているなど、全国のさまざまな困難を抱えた若者のLINE相談窓口(名称:ユキサキチャット)を運営しています。ユキサキチャット事業部の業務効率化を図り、全国の若者の相談が受け取れるチーム体制をつくります。①食糧支援の効率化/自動化②給付面談実施の効率化/相談者・支援内容のデータ一元化③相談員のメンタルマネジメント体制の構築を行います。2025年度にはユキサキチャットの累計登録者23,000人を超える相談対応ができる状態を目指します。
【「みてね基金」からのコメント】
コロナ禍により大きく需要が高まっているユキサキチャットの業務効率化という課題に対し、的確かつ効果的な内容のご申請をいただき、団体の確かな実力を感じました。団体が取り組む、若者が気軽に利用できるオンライン上での相談・支援事業は、独自性も高く、今後も大きく発展が見込まれる分野です。今回の機会を活かし、孤立に苦しむ日本中の子どもたちへの支援が加速することを期待しています。
認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク
【代表者:栗林知絵子コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
地域の子どもを地域が見守り育てる社会の実現のため、さまざまな居場所を通じて地域の子どもと繋がり、関係を育んでいます。
子育ては親の責任という社会風潮のもと、困窮世帯は社会から孤立しがちで、ストレスを抱えた親と共にその子どもも孤立していく傾向にあります。困難を抱えている家庭を孤立させないために、誰もがSOSを発信できて、それを受け取り、解決できる地域社会のつながりを広げることを目指し活動しています。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
今回取り組む活動は、「WAKUWAKU基盤強化」。未来につなげる組織づくりです。
当団体はこの10年で事業を拡大し、より広く細部にアウトリーチできる団体になりましたが、同時に組織としてのさまざまな問題も抱えるようになりました。
組織が大きくなり、団体内のコミュニケーション不足で、本来期待できるはずのそれぞれの活動の相乗効果が発揮できておらず、若手の育成も進んでいない現状と、戦略的な広報・財政活動を行なっていないため、常に資金に不安を抱えている状態です。
昨年の認定NPO法人の取得を機に、設立当初のWAKUWAKU感を失わず、人も団体も成長できる組織を目指し、この基盤強化に取り組みたいと思います。
【「みてね基金」からのコメント】
自団体による事業の拡大に加えて、地域の支援者ネットワークを構築し、地域資源を豊かにしてきた団体の人材育成やコミュニケーションの進化、そして資金調達という、組織の基盤を強化する事業は、団体のみならず、地域の支援ネットワークの繁栄にもつながると考えています。
課題を率直に捉えたうえで、持ち前のネットワークを活かし、団体内外の力を動員して、ステップアップを着実なものにしていただきたいと期待を寄せています。
NPO法人発達わんぱく会
【代表者:小田知宏コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
発達障害を持つ子どもは、幼児期に適切な支援がないと、虐待・いじめなどにより不登校・就労困難等の二次障害を引き起こすことが多いものの、効果が高い幼児期の療育が十分に行われていない現状があります。発達わんぱく会は、「すべての子どもが、発達障害を持って生まれても、自立したその人らしい大人になって、豊かな人生を送れる社会」を目指し、「発達障害のある子どもが、コミュニケーションの力を身につけ長所を伸ばし、地域のなかで自分らしく生きていけるよう、家族、地域、行政のみんなで支援する」を理念として、千葉県浦安市と東京都江戸川区で児童発達支援事業所「こころとことばの教室こっこ」を運営するなど、幼児の発達を支援しています。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
1年半かけて以下4つの活動を実施し、組織再編を実施・中期事業計画を策定します。
1.10年後の目標設定(具体性を持った目標設定、法人内への落し込み)
2.各事業における方向性の設定(収益規模の検討、協働の可能性、市場調査等)
3.組織再編(2を実現できる、法人らしさと主体性を軸とした組織編成)
4.中期事業計画策定(法人内、ステークホルダーとの共有を通じ信頼性の担保、随時アップデートを行なう基盤とする)
法人全体を巻き込むことで、スタッフ1人1人が自分事として「法人が目指す目標に貢献したい」というマインドと、未来に前向きに歩むモチベーションを持ち、健全な組織として前進している状態を目指します。
【「みてね基金」からのコメント】
団体設立から10年強、児童発達支援事業所を開設し、他団体へのコンサルティング(開設・運営支援)を全国で拡げてきた団体が、立ち止まって計画し、更なる飛躍をするための組織再編と10年後に向けた目標や計画の設定を、従来とは異なるアプローチで行うという本プロジェクトは、団体内でのこれまでの対話とそれによるコンセンサスがあってこその提案だと考えています。本プロジェクトの実現により、発達障がい、またその疑いのある子どもたちに、より広く利用される事業が展開されるよう期待しています。
特定非営利活動法人happiness
【代表者:宇野明香コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
happinessでは、生活困窮世帯やひとり親世帯といった家庭環境に関係なく、子どもたちが健全に育つため、親や行政、地域、企業、関係団体と連携し、子どもやその家庭をサポートするとともに、その環境を整えるため、社会的孤立を防ぐ地域づくりを行い、未来の日本を支える人づくりに寄与することを目的として、子ども食堂や就労支援の受け入れのためのカフェなどを運営しています。さらに、地域で使える子どもチケットの発行やお祭りイベントの企画などを通じ企業やNPO同士での連携を図り目的の達成を目指しており、2022年度からは、活動を通じて出会った困難を抱える子ども・若者たちへの衣食住に関する直接的な支援もスタートさせました。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
制度の隙間からこぼれ落ちてしまう少女たちに、安心安全な居場所を継続的に提供できるような体制を整えます。現在は助成金と単発の寄付に頼っている状況であるため、資金調達や団体運営について専門的なアドバイスをしてくれるファンドレイザーを迎え、安定した経営を目指すべく専任者の養成と基盤強化を行います。
ホームページのリニューアルも実施し、各事業内容や日々の取り組み状況の発信に加え、少女たちが置かれている環境や当事者の思いを伝える場としても活用します。
【「みてね基金」からのコメント】
民間非営利組織ならではの、公的支援につながりにくい子どもを対象とする事業を可能にする法人の基盤強化をご申請いただきました。現場での活動だけではなく、経営を磨く時期に来たという課題感を持つタイミングは、ステップアップの好機だと考えています。この機を活かして足元を整え、更なる飛躍への基盤をつくっていただきたいとご支援を決めました。またこれまで地域との関係性を作ってきたからこそ、それを地域の支援の拡がりに寄与していただきたいと期待しています。
一般社団法人merry attic
【代表者:上田馨一コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
merry atticのミッションは、次の世代へ「志」をつなぐこと。そのために「今」に夢中になれる場所、はじめの一歩を踏み出す挑戦の場をつくります。
今、merry atticは、児童虐待の発生予防に取り組んでいます。子育て世帯の育児疲れを、一時的な休息で緩和することで児童虐待の発生予防を行います。この課題を解決する一手として、独立型子どもショートステイ事業を行なっています。独立型子どもショートステイ事業は、宿泊を伴って子どもを預かり、一時的に養育を代わる事業です。この活動を通し、育児疲れから児童虐待に繋がらない社会を作ります。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
助成事業では、団体内における業務生産性の向上、ファンドレイジングに向けた仕組みづくりについて活動を行います。団体内における業務生産性の向上では、社内人材のステップやポジションに応じた研修を行い、マネジメント体制の構築を行います。また、ファンドレイジングに向けた仕組みづくりでは、現在取り組んでいる社会課題に対して、一緒になって解決を考えてくださるサポーターの方々を募集するべく、マンスリーサポーターのシステム構築や、企業さまへの課題のご説明などに着手するチーム組成を行います。これらの活動を通し、社会課題の解決への道筋をより強固なものにし、解決へのスピードアップを図ります。
【「みてね基金」からのコメント】
ショートステイによる子どもの虐待防止事業は、今後日本で大きく発展が期待される分野だと考えています。また、団体設立以来、地域の課題に柔軟に取り組んできた実績も高く評価しています。団体の目指すショートステイ事業のモデル化による全国普及は、団体にとってこれまでに無いチャレンジとなりますが、今回の助成をうまく活かして、飛躍のための着実な組織基盤整備に取り組んでいただければと思っています。
認定特定非営利活動法人夢職人
【代表者:岩切準コメント】
■団体の活動内容(課題と描きたい未来像)
夢職人では、「子どもと若者の学びや育ちを社会全体で支える」をミッションとし、主に首都圏の子どもや若者を対象とした体験活動等の社会教育事業、経済的な事情を抱える子育て家庭に食と情報を提供する社会福祉事業に取り組んできました。ミッションの実現を目指し、全ての事業を多様なステークホルダーが参画できるプラットフォーム型の事業として展開してきました。発達障がいや不登校、貧困など、様々な状況に置かれている子どもたちが、インクルーシブな環境で学び・育つことができるように、地域の一翼を担っていきたいと考えています。
■今回の助成で取り組むこと、ゴール
本事業では、①事業の拡大に伴うマネジメント体制の強化、②資金調達のための仕組みづくり、③事業と資金調達を拡大するためのホームページのリニューアルの3つを実行します。本事業を通じて、様々な状況に置かれている子どもを受け入れ、体験活動を推進していくための新たな体制づくりを行います。また、今後、経済的な事情を抱える子育て家庭に対する支援の拡大ができるように、資金調達基盤の強化に取り組みます。この2年間を通じて、組織の人と資金の新たな基盤づくりに取り組むことで、対象者のニーズに応じた事業の拡充を目指したいと思います。
【「みてね基金」からのコメント】
子どもや若者に対する先駆的で質の高い社会教育活動を20年近く地道に取り組まれてきた団体です。コロナ禍で団体の取り組む体験活動と食支援の重要性が社会的に認識され、団体の果たす役割も大きいと考えています。今回のご提案は、団体に寄せられる期待に応えるために組織体制を見直し、活動規模を飛躍的に拡大することを目指す、第二創業とも言えるものです。この助成を機に、団体を再び大きく発展させ、首都圏の子どもたちに広く活動を届けるためのお手伝いができればと考えています。
以上